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離床センサで高齢者の転倒・転落を防ぐ

 高齢者が転倒すると、骨折のリスクが高くなり、その結果、日常生活の動作(ADL)や生活の質(QOL)の低下につながることがあります。そのため、転倒や転落を防ぐことはとても重要な課題です。現在、多くの病院では転倒防止のために離床センサが使われています。

 しかし、今の離床センサにはいくつかの問題があります。たとえば、センサが作動した際に鳴る音が、ナースコールの音と同じため、看護師はその呼び出しが通常のものなのか、緊急性があるものなのか判断できず、すぐに病室へ向かわなければなりません。その結果、看護師はほかの仕事を中断しなければならないことが多く、業務負担が増える原因となっています。また、患者さんにとっても、必要のないときに看護師が来ることで不快に感じる場合があります。

 こうした課題を解決するため、工学の専門家と協力し、新しい離床センサの開発に取り組んでいます。このセンサは「一次元輝度分布センサ」という技術を活用しています。これにより、次のような状態を感知できる仕組みを目指しています。

  • ベッドに横になっている状態
  • ベッドに座っている状態
  • ベッドから離れた状態
  • 部屋に誰かが入った状態

 このセンサは、患者さんのプライバシーに配慮しながら、より的確に状態を把握できるように設計されています。これにより、看護師の業務負担を軽減し、必要なときに必要なケアが提供できるようになります。

 さらに、このセンサは病院だけでなく、グループホームなどの施設でも活用できる可能性があります。高齢化が進むこれからの社会において、高齢者を見守るための重要な技術として期待されています。また、海外では最近「行われなかったケア(提供されるべきケアがされなかったこと)」が注目されています。新しいセンサを導入することで、看護師の業務効率が向上し、「行われなかったケア」が減少する可能性があります。結果として、患者さんにとっても安心できる環境が整うでしょう。

 

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