「人間性の涵養と実学の重視」の意味するもの
宇部フロンティア大学
学長 高田 晃
明治36年(1903年)初代理事長である香川昌子先生は「女性こそ学問が必要である」という明治時代にあって先進的な考えに基づき、先生が目指す理想の教育を行うために私塾である香川裁縫塾を開塾しました。宇部フロンティア大学を開学するに当たって、香川先生が実践してこられた実生活に密着した教育と人間愛に満ち溢れた教育を「人間性の涵養と実学の重視」と表現して建学の精神として掲げ、本学の教育理念としました。
学生の皆さんは本学に入学するまでに多くのことを学び、それを基に将来への希望や夢をいだき本学に入学してきます。その夢を現実のものとなるようサポートするのがわれわれ教職員の責務です。将来の夢がまだ明確でない学生は、夢を一緒に探します。学生生活を過ごす中で夢が変化した学生には新しい夢について一緒に考えていきます。誰一人取り残されることのないように、入学してきた一人ひとりの学生とのつながりを大切にして、学生の自己実現に向けた歩みを全教職員がワンチームとなって支援していきます。
大学での学びは、ただ人から教えられることを学ぶのではなく、自ら進んで学ぶ「能動的な学び」が基本になります。つまり、学生は「自主・自立」のもとで学ぶことを前提にしています。本学では、講義・演習・実習・実験・ゼミなどの学びのスタイルが用意されていますが、これらは皆さんが自身で習得し成長される「学び」を、最適な形でサポートするためのものです。
本学における建学の精神と教育理念である「人間性の涵養と実学の重視」について改めて考えてみます。まず、「人間性の涵養」とは、人間の多様な生き方を尊重しつつ、自らの考えを持ち、共通の目的に向かって自律的に行動できる人材を育成することを表しています。どんな仕事であっても異なる職種、異なる価値観を持った人たちと協働して問題解決に当たることが求められます。そのような社会で問題解決に当たるためには自分が置かれた状況を理解し、関わりのある他者を理解し、寄り添うことができる人間力を涵養することが大事です。
次に「実学の重視」とは、すぐに役に立つ知識や技術を手っ取り早く獲得することではありません。実際の現場で経験を積み重ねることによって、知識と技術を自分のものにするプロセスを重視した教育を行うということです。このような能力は、多様な意見や背景を持った人たちと交流する現場での経験を積み重ねることによって育成されます。それは、人と人とのつながりの中で新たな価値を創造するプロセスでもあります。この経験が「人としての奥行き」を涵養し、人間性豊かな人材を育成します。
本学では、建学の精神に基づく教育のモットーとして「礼節、自律、共生」を掲げています。礼節とは「他者の尊厳を尊重すること」、自律とは「自己の確立、自ら考え行動すること」、共生とは「共通の目的の実現に向かって努力を惜しまないこと」をあらわしています。
自己と他者の関係性を構築し、自己の個性を生かして行動することにより、既存の価値観の受け売りではない、自分の考えによる解決策を生み出す能力を育成する教育を行うためのスローガンとして「あなたらしさを仕事力に」を掲げ、皆さんの自己実現を支援します。
近年はコロナ禍の社会的混乱やウクライナでの戦争が象徴するように、変動性、不確実性、複雑性、曖昧性の頭文字をとった VUCA 時代と言われています。先行きが不透明で、将来の予測が困難な社会情勢を背景として、人々の価値観はこれからますます多様になると思われます。本学で学ばれる皆さんには、そのような社会情勢に翻弄されることなく、物事の本質を見極めながら自らが抱いた将来の自分の姿を目指して学生生活を過ごしてください。本学での4年間が、充実した時間となりますことを衷心より祈念いたしております。